母が残した手の記憶

母が残した手の記憶

実家には後から後からいくら片付けても亡き母の物が出てきます. 

人間は2 回, 死ぬと聞きました. 

1 回目は体が滅びる時. 2 回目は, 亡くなった人の周りに居た人達がその人を思い出しては泣いたり, 思い出話を語ったりしますが, それがやがて無くなる時です. やがて無くなる時は何世代もの孫, ひ孫達が祖先を語っていくのですから, 2回目で亡くなることは無いのかなとも思うので, その魂は亡くなる事は無いのでしょう. これはさておき. 

父が倉庫を片付けているとまだまだ出てくる母の物. 私は人間は2回死ぬ, という話を聞いた時, もしかして, 母からの何かのサインなのかな, って思ったりします. 私の事, まだまだ忘れないでよ, ここに居るんだよって. お母さん, 私達は貴方のこと忘れられませんよ. 毎朝, 仏壇にお線香を1本をたててそうに語っています. 

その倉庫から出てきたのは, 母が残した手の記憶でした. 父は言いました,「何だこれは?使えそうだけど,,, 俺は使えないなー, お前が何かで使え!」っとどさっと渡されました. いちおう, 自分の住まいに持ち帰って開かずにそのままにしていたのですが. ある日, 何気なくその箱を開け, 中身をよく見ました. 父は小物の手作りとかしない大ざっぱな(?)人だから気が付いていなかったのですが, 箱に入っていたのは, 数百枚の和紙に水彩絵具で紋様を染めた母のお手製の千切り絵用の和紙素材でした. 私も一瞬見て箱を閉めてしまったので気がついていなかったのですが(実は). 驚きと共にえらい!とひとりで感動していました. 

亡き母が残した痕跡はこれから生産されることは無く, とても大事な貴重な物です. でもやっぱり, 大事な物だと言ってこれをこのまま箱に保管をしておく方がもったいない様な大事にしない様な気さえしました. 今, 私が母へ出来る事は, 母の記憶を忘れないためにも母が残した物で作品を再構成することだと思います.

まだ先ですが2020年6月に名古屋ですが, GalleryAPA様で個展をさせて頂きます. 今はちょっとづつちょっとづつ慌てない様に自身の精神と語りながら制作をしています. この作品がスポットライトを当てられます様に.